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研究内容

高分子微粒子は塗料、接着・粘着剤等の工業分野において、フィルム形態で広く利用されています。近年、フィルム形態での利用に加え、微粒子形状のままでの利用にも関心が高まっています。高分子微粒子は、大きな比表面積、高い運動性、表面化学の制御が比較的容易であることからその利点を生かし、物理化学、医学、生化学、宇宙科学等学術分野、および情報、生体材料、化粧品等工業分野において応用利用が始まっています。また、微粒子が界面に吸着することで、エマルション、泡、リキッドマーブル等のソフト分散体の安定化が可能であることに近年注目が集まっています。

当研究室では、高分子化学、界面化学を駆使し、これまでに誰もつくったことのない高機能性高分子微粒子のデザイン、合成、評価を行っています。さらに、微粒子の界面吸着現象を利用した、気液、液液分散系の安定化に関する基礎研究を行い、ソフト材料である高分子ならではの性質を活かし、材料化学への応用展開を進めています。

機能性高分子微粒子の創出

乳化重合法、分散重合法、シード重合法、ピッカリングエマルション法等を利用し、大きさ、単分散性、形状、内部モルフォロジィーが精密にデザインされた高分子微粒子の合成を行っています。

1)有機無機同時析出重合法による高分子-貴金属ナノコンポジット粒子の創出

モノマーと酸化剤の酸化還元反応により高分子と貴金属ナノ粒子を媒体中に同時に析出させる重合法である化学酸化重合を利用した、微粒子合成法の開発に取り組んでいます。これまでに、導電性高分子マトリックス中に貴金属ナノ粒子がナノメートル次元で分散したナノコンポジット粒子の合成に成功しており、触媒機能の発現も確認しています。

  • Journal of Materials Chemistry A 1(14), 4427-4430 (2013)
  • Langmuir 28(5), 2436–2447 (2012)
  • Catalysis Letters 141, 1097-1103 (2011)
  • Langmuir 26(9), 6230-6239 (2010)
  • Synthetic Metals 160, 1433-1437 (2010)
  • Journal of Materials Chemistry 17, 3777-3779 (2007)

2)コアシェル粒子の創出

コアシェル粒子は、コア物質の外部刺激からの隔離、外部刺激によるコア物質の取り出し、コア部およびシェル部への機能導入などが可能であり、これらの機能を生かして、塗料、接着剤、フィラー、トナー、ドラッグデリバリーシステムにおけるキャリアー、カプセル、触媒担体、宇宙塵モデルなどとして応用・利用されています。当研究室では、シード粒子存在下にて、重合反応、バイオミネラリゼーション反応を行うことで、コアシェル型粒子の合成を行っています。

  • Polymer 70, 77-87 (2015)
  • Journal of Colloid and Interface Science 430, 47-55 (2014)
  • Chemical Communications 46, 7217-7219 (2010)
  • Colloids and Surfaces B: Biointerfaces 78, 193–199 (2010)
  • Chemistry of Materials 19, 2435-2445 (2007)
  • Chemistry of Materials 18, 2758-2765 (2006)
  • Langmuir 22, 4923-4927 (2006)

3)ピッカリングエマルション法による機能性粒子の創出

固形微粒子が油水界面に吸着することで安定化されたエマルションはピッカリングエマルションと呼ばれます。ピッカリングエマルションを出発系とし、マイクロカプセル、コアシェル型、多中空型複合高分子微粒子の合成について研究を行っています。分子レベルの乳化剤を一切使用しない高分子微粒子合成法であり、乳化剤の存在が問題視される、バイオマテリアル分野へ研究を展開しています。

  • Langmuir 28 (25), 9405–9412 (2012)
  • Acta Biomaterialia 7, 821-828 (2011)
  • Langmuir 26(17), 13727-13731 (2010)
  • Langmuir 25(17), 9759-9766 (2009)

4)重合誘発型自己組織化法による高分子粒子の創出

刺激応答性、生体適合性等の機能を有する反応性高分子を分散安定剤として使用した分散重合法により、粒子表面に機能性高分子がヘアーとして生えた、ヘアリー粒子の合成、評価を行っています。

  • Langmuir 35(21), 6993-7002 (2019)
  • Macromolecules 45 (6), 2863–2873 (2012)
  • Journal of Polymer Science Part A: Polymer Chemistry 49(7), 1633-1643 (2011)
  • Polymer 51, 6240-6247 (2010)
  • Journal of Polymer Science Part A: Polymer Chemistry 47, 3431-3443 (2009)
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微粒子安定化エマルション(エマルション工学)

高分子微粒子表面の親疎水性を、pH、温度等の外部刺激によりin situで変化させることで、微粒子の油水界面からの脱離反応を誘発し、on demandでのエマルションの解乳化の実現化に成功しています。また、分子レベルの乳化剤を使用せず、生体適合性を有する微粒子(ヒドロキシアパタイト粒子、タンパク質)を乳化剤としたエマルションの安定化についても研究を行っています。さらに、液滴表面において微粒子をフィルム化させることで、カプセルの合成にも成功しています。

  • Polymers 8, 62 (2016)
  • RSC Advances 4(61), 32534-32537 (2014)
  • Langmuir 29, 5457-5465 (2013)
  • Journal of Colloid and Interface Science 338, 222-228 (2009)
  • Journal of Colloid and Interface Science 315, 287-296 (2007)
  • Langmuir 22, 6818-6825 (2006)
  • Langmuir 22, 2050-2057 (2006)

微粒子安定化泡(泡工学)

微粒子の気液界面吸脱着現象を利用し、泡の安定化に関する研究を行っている。これまでに、pH、温度等の外部刺激により、安定性・構造の制御が可能な刺激応答性の泡系の確立に成功している。また、微粒子安定化泡をプラットホームとする、色材、多孔質材料の創出にも成功している。さらに、気泡表面において微粒子をフィルム化させることで、カプセルの合成が可能であることを見出している。

【総説】
  • Current Opinion in Colloid & Interface Science 50, 101380 (2020)
  • Polymer Journal 51, 1081-1101 (2019)
  • Langmuir 33, 7365-7379 (2017)
【論文】
  • Langmuir 34(3), 933-942 (2018) [Highlights from the Langmuir Editorial Advisory Board]
  • Soft Matter 12, 4794-4804 (2016)
  • Soft Matter 11, 9099-9106 (2015)
  • Chemistry Letters 44(6), 773-775 (2015)
  • Soft Matter 11 (3), 572-579 (2015)
  • Langmuir 27(21), 12902-12909 (2011)
  • Langmuir 23, 8691-8694 (2007)
  • Langmuir 23, 11381-11386 (2007)
  • Journal of the American Chemical Society 128, 7882-7886 (2006)
  • Langmuir 22, 7512-7520 (2006)
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微粒子安定化液滴(リキッドマーブル)

合成高分子微粒子がリキッドマーブルの安定化剤として機能することを、世界に先駆けて報告している。刺激応答性高分子微粒子を安定化剤とすることで、pH、温度等の外部刺激により内部物質の取り出しが可能なカプセル材料の創出に成功している。また、様々な形状にデザイン可能で、つまんで運ぶことの出きるリキッドマーブルの開発にも取り組んでいる。液滴のハンドリング性を向上させ、利用範囲を拡張させる技術として重要な研究であると考えています。

【総説】
  • Polymer Journal 51, 1081-1101 (2019)
  • Accounts of Materials & Surface Research 4(2), 61-68 (2019)
  • Advanced Functional Materials 26(40), 7206-7223 (2016)
【論文】
  • Advanced Materials Interfaces (2020) DOI:10.1002/admi.202001573
  • Langmuir 36(44), 13274-13284 (2020)
  • Langmuir 36(10), 2695-2706 (2020)
  • Advanced Functional Materials 29(25), 1808826 (2019) [Highlighted in Nature, NewScientist, NHKニュース全国版]
  • Langmuir 34(17), 4970-4979 (2018)
  • Materials Horizons 3, 47-52 (2016) [Highlighted in Chemistry World, NewScientist, Yahooトップニュース]
  • Soft Matter 11, 7728-7738 (2015)
  • Langmuir 30(11), 3051–3059 (2014)
  • Langmuir 27(13), 8067-8074 (2011)
  • Soft Matter 6, 635-640 (2010)
  • Journal of the American Chemical Society 131, 5386-5387 (2009)

自然界に存在する微粒子材料

アブラムシの一部のグループ(ワタムシ亜科やヒラタアブラムシ亜科)は、植物の葉に虫こぶを形成することが知られています。虫こぶ内で生活するアブラムシは、リキッドマーブルに基づく液体粉体化技術という画期的な発明によって、生活空間から甘露を排出しています。本研究室では、アブラムシが作製するリキッドマーブルの構造、化学組成、物理的性質の評価に取り組んでいます。

  • Langmuir 35, 6169-6178 (2019)
  • 昆虫と自然 55(7), 5-8 (2020)

微小物体の運動制御

ミリメートルからセンチメートルサイズの小物体の運動制御は、マイクロ流路、ソフトロボット、ドラッグデリバリー等の分野で注目されているトピックです。小物体の運動を発現させるための駆動力として、化学反応、物質の溶解による表面張力勾配、電場・磁場が利用されています。これらの研究の最終目標は、非接触で物質を目的の場所へ運搬し、希望するタイミングで小物体内の物質を放出することですが、これまでに小物体の運搬と物質の放出を同時に制御する方法は確立されていませんでした。 我々は、微粒子安定化ソフト分散体をキャリアーとする、光刺激による物質運搬および目的地におけるpH、温度、光刺激による物質放出の制御に成功しました。

  • Polymer 212, 123295 (2020)
  • Polymer Journal 52, 589-599 (2020)
  • European Polymer Journal 132, 109723 (2020)
  • Langmuir (2020) 36(25), 7021-7031[Highlighted in環境展望台(国立環境研究所)]
  • Polymer Journal 51, 761-770 (2019)
  • RSC Advances 9, 8333-8339 (2019)
  • Macromolecules 52(2), 708-717 (2019) [Highlighted in 朝日新聞]
  • Polymer 148, 217-227 (2018)
  • ACS Applied Materials & Interfaces 9(38), 33351-33359 (2017) [Highlighted in日本経済新聞]
  • Polymer Chemistry 8, 2609-2618 (2017)
  • Advanced Functional Materials 26, 3199-3206 (2016) [Highlighted in Nature Photonics, NewScientist, 日刊工業新聞]

機能性高分子フィルムの創出

界面を、ソフトネス、規則性および異方性の導入場として捉え、表面と裏面で化学的、物理的性質の異なる異方性複合高分子材料(ヤヌス型材料)の合成に取り組んでいます。

  • Angewandte Chemie International Edition 51, 9809-9813 (2012)
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